清月俳句歳時記 野田ゆたか編
 
 
  第2付録 編者が感銘を受けた鴎外の短歌」45首  
 
 
 
 
 
 
その一
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その二
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その三
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その四
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その五
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鴎外忌/清月は遺句歳時記 野田ゆたか編の第二付録 森鴎外の短歌45歌 /幼子の歌 をさな子の片手して彈くピアノをも 聞きていささか樂む我は 森鴎外の短歌/咳の歌 時の外の御座にいます大君の 謦咳に耳傾けてをり 森鴎外の短歌/友の歌 友ひとり敢ておん身に紹介す かかる樂器に觸れむ我手か 森鴎外の短歌/人を思うの歌 あまりにも五風十雨の序ある 國に生れし人とおもひぬ 森鴎外の短歌/丸き目の歌 うまいより呼び醒まされし人のごと 圓き目をあき我を見つむる 森鴎外の短歌/花の歌 おのがじし靡ける花を切り揃へ 束に作りぬ兵卒のごと 森鴎外の短歌/我が身の歌 掻い撫でば火花散るべきK髮の 繩に我身は縛られてあり 森鴎外の短歌/桜の歌 かかる日をなどうなだれて行き給ふ 櫻は土に咲きてはあらず 森鴎外の短歌/孤児の歌 とこしへに饑ゑてあるなり千人の 乞兒に米を施しつつも 森鴎外の短歌/コスモスの歌 み心はいまだおちゐず蜂去りて コスモスの莖ゆらめく如く 森鴎外の短歌/魂の歌 わが魂は人に逢はんと拔け出でて 壁の間をくねりて入りぬ 森鴎外の短歌/生け贄の歌 愚の壇に犠牲ささげ過分なる 報を得つと喜びてあり 森鴎外の短歌/白鳥の歌 或る朝け翼を伸べて目にあまる穢を掩ふ大き白鳥 森鴎外の短歌/黙の歌 慰めの詞も人の骨を刺す 日とは知らずや默あり給へ 森鴎外の短歌/猛火の歌 一曲の胸に響きて門を出で 猛火のうちを大股に行く 森鴎外の短歌/書を読むの歌 一夜をば石の上にも寢ざらんや いで世の人の讀む書を讀まむ 森鴎外の短歌/火鉢の歌 寡慾なり火鉢の縁に立ておきて 煖まりたる紙巻をのむ 森鴎外の短歌/我が詩の歌 我詩皆けしき臟物ならざるは なしと人云ふ或は然らむ 森鴎外の短歌/我が足の歌 我足の跡かとぞ思ふ世々を歴て 踏み窪めたる石のきざはし 森鴎外の短歌/火事の歌 狂ほしき考浮ぶ夜の町に ふと燃え出づる火事のごとくに 森鴎外の短歌/拍子木の歌 君が胸の火元あやふし刻々に 拍子木打ちて廻らせ給へ 森鴎外の短歌/木魚の歌 好し我を心ゆくまで責め給へ 打たるるための木魚の如く 森鴎外の短歌/新聞記者の歌 此星に來て栖みしよりさいはひに 新聞記者もおとづれぬかな 森鴎外の短歌/回転椅子の歌 今來ぬと呼べばくるりとこち向きぬ 囘轉椅子に掛けたるままに 森鴎外の短歌/吊橋の歌 重き言やうやう出でぬ吊橋を 渡らむとして卸すがごとく 森鴎外の短歌/釈迦の歌 小き釋迦摩掲陀の國に惡を作す 人あるごとにき糞する 森鴎外の短歌/世の中の歌 世の中の金の限を皆遣りて やぶさか人の驚く顔見む 森鴎外の短歌/雪の歌 雪のあと東京といふ大沼の 上に雨ふる鼠色の日 森鴎外の短歌/枯柳の歌 突き立ちて御濠の岸の霧ごめに 枯柳切る絆纏の人 森鴎外の短歌/笑顔の歌 汝が笑顔いよいよ奄ミ我胸の 悔の腫ものいよいようづく 森鴎外の短歌/宴会の歌 美しき限集ひし宴會の 女獅子なりける君かかくても 森鴎外の短歌/防波堤の歌 防波堤を踏みて踵を旋さず 早や足蹠は石に觸れねど 森鴎外の短歌/薬師の歌 脈のかず汝達喘ぐ老人に 同じと藥師云へど信ぜず 森鴎外の短歌/夢の歌 夢なるを知りたるゆゑに其夢の 醒めむを恐れ胸さわぎする 森鴎外の短歌/惑星の歌 惑星は軌道を走る我生きて ひとり欠し伸せんために 森鴎外の短歌/勲章の歌 勳章は時々の恐怖に代へたると 日々の消化に代へたるとあり 森鴎外の短歌/夢に死ぬの歌 圓壟の凝りたる波と見ゆる野に夢に生れて夢に死ぬる民 森鴎外の短歌/写真の歌 寫眞とる一つ目小僧こはしちふ 鳩など出だすいよよこはしちふ 森鴎外の短歌/貌花の歌 貌花のしをれんときに人を引く くさはひにとて學び給ふや 森鴎外の短歌/霊の歌 鬪はぬ女夫こそなけれ舌もてし 拳をもてし靈をもてする 森鴎外の短歌/恋の歌 ことわりをのみぞ説きける金乞へば 貸さで戀ふると云へば靡かで 森鴎外の短歌/恋の歌 頬の尖の黶子一つひろごりて 面に滿ちぬ戀のさめ際 森鴎外の短歌/恋の歌 厭かれんが早きか厭くが早きかと 爭ふ隙や戀といふもの 森鴎外の短歌/恋の歌 此戀を猶續けんは大詰の 後なる幕を書かんが如し 森鴎外の短歌/恋の歌 善惡の岸をうしろに~通の 帆掛けて走る戀の海原 森鴎外の短歌